2006年06月04日

Revox A-77

 コレクションしていたRevox A-77の整備が終わり、40年近く前の性能が蘇った。オリジナルの操作性と音質を取り戻したと満足。
 「無線と実験」でも紹介したが、私の手許には10台近くのA-77が集まっていて、その一つひとつを時間を見付けては手を入れてきた。
 スイスの名門ウイリー・スチュ−ダがプロフェッショナル機器であるC37や62をベースに一般コンシューマー向けに Revoxという商品名で造った製品だけにいじり甲斐がある。
モーターの精度にも、ネジ1本の使い方にも、独特の味があるし、その絶妙な音づくりのうまさは、ほかの製品とは比較できない。
 A-77内部には、録音や再生回路などをチャンネルごとに受け持つ独立した7〜8枚のボードがあるが、その一枚一枚を点検、それからファンクション・スイッチの接触などをチェックした。メカ部分はブレーキを調整し、カウンターベルトを取り替えた。
 
 それで、40年前のプリ・レコ−デッド・テープをかけて聴いてみる。例えば、グレン・グ−ルドとレオポルド・ストコフスキーの「皇帝協奏曲」とかマイルス・デイビスの「枯葉」とか。それが、驚くほどの新鮮さ。
 これは、正に、ヴィンテージのだいご味!

 そうしたことを繰り返すうちに、ますますRevoxにのめり込んでしまう。
 今度は、Revox G-36やB-77もいじってみようと計画中。
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2006年05月29日

象のコミュニケーション

 象は、超低音で話し合い、コミュニケーションをとっている、とNHKのTV番組が伝えていた。すごく、面白かった。
 象は人間には聞こえない20ヘルツ以下の周波数で話し合う。これを超低音を記録できるマイクを使って、ケニアのサファリに居る象の群れに近づき、会話を録音した。この様子を映像とともに捕らえ、コンピュータで分析する。象の生態を30年も研究しているドイツ人学者が会話の内容を説明していたが、なかなか説得力があった。
 「わたしは向こうへ行く」「わたしはここに残る」「じゃあ、わたしもそうする」などと話し合う。

 超低音で話し合う動物は、象のほかにはクジラしかいないという。
 身体が大きいので、超低音が出せるから。

 空気を振動させて音を出すスピーカーのことを考えた。
 スピーカーから低音を出すにはスピーカーは大きくなければならないが、最近のオーディオ用スピーカーは小さくなりつつある。それで、本当の低音は出せるのだろうか?
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2006年05月15日

中性洗剤とガーゼでゴシゴシ

 オープン・リールやカセット・レコーダーのヘッドは汚れやすく、これが音質劣化の原因になったり、録音/再生がうまく行かなったりします。
普通、テープレコーダーには、ヘッド・クリーニングのための綿棒とクリーニング液が付いていますし、このためのキットも売り出されています。

 そんなとき、しつこい汚れには中性洗剤とガーゼでゴシゴシ磨いたほうが効果的だというメールをいただきました。皆さんもお試しあれ!

 そういえば、私がNHKに居たとき、エンジニアたちは、毎朝、スタジオにある録音機一台一台のヘッドをガーゼとクリーニング液で丁寧に磨いていました。確か、日常業務の一つだったと思います。
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2006年05月10日

オリジナルの迫力

映画「秘密のかけら」(Where the Truth Lies 2005年 アトム・エゴヤン監督 原作:ルパート・ホルムズ)の中には、ドイツのウーエルとスイスのレボックスのオープンリールのテープレコーダーが写し出される。ときどきアップになるので、映っている機械がどのモデルかはっきりと見分けがつく。
アトム・エゴヤン監督が来日したので、その辺の事情を本人に直接聞いた。
「この映画は1950年代と70年代の人間やその背景にあるモノを、できるだけ、正確に描きたかったので、非常に神経を使い、入念にリサーチしました。オープン・リールのテープレコーダーを使ったのは、主人公の女性と父親との結びつきを描いたからです。ジャーナリストの父親が取材に使っていたテープレーダーを、やはりジャーナリストになった彼女が使うという設定にしました。編集の段階でカットしましたが、その父親が50年代のテレビスタジオで同じテープレコーダーを回しているシーンもありました。レボックスは70年代のぜいたくなオーディオ製品の象徴でした。ちょっと古臭いイメージはありましたが、あえて、使ってみました。2005年の今では新鮮に感じます。私としては、たとえ、ほとんどの観客が気づかないとしても、そういった本物を映画の中に取り入れることが必要だと思っています」

(原島一男)

初出:MJ「無線と実験」2006年2月号 「オーディオは悩ましい」(3)
    誠文堂新光社

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2006年02月19日

ああ、ニューオーリンズ


2005年の夏、ハリケーン「カトリーヌ」が襲ったニュ−オーリンズのミュージシャンたちの演奏に耳を傾ける。そのCDを聞くと、涙がこぼれる。
中学生のころ、アメリカにニュ−オーリンズという場所があり、そこでジャズが生まれた、と聞いた。ちょうど、「初歩のラジオ」を読みながら、真空管ラジオを組み立て始めたころだった。当時では耳慣れないジャズという言葉に何か惹かれるものを感じた私はずっとニュ−オーリンズを忘れなかった。その後、少年時代のあこがれを確かめるために、私はニュ−オーリンズを訪れてみた。1958年と1991年の二回。

アメリカで最もおもしろい街といわれるニュ−オーリンズは、決して、私の期待を裏切らなかった。二回目の訪問の時も、30年前との隔たりをほとんど感じさせないほど、変わっていなかった。それからもう15年になるが、繁華街バーボン・ストリートを歩くと、ほかとは違う世界があった。五軒おきか、それとも十軒おきにニューオーリンズ・ジャズを生演奏しているカフェがあり、自由に、何百年も続いて来た音楽を聴けた。鋭い音色のトランペット、ややしわがれたトロンボーン、弾むようなクラリネット、それに、バンジョー、ピアノ、ベース、ドラムが加わったデキシーランド・スタイル。そこで毎晩演奏しているウォーレス・デイヴェンポートとそのグループのCDだ。その中の一曲、「ニュ−オーリンズ」というタイトルのスローバラードを聴くと、哀愁に満ちたニュ−オーリンズの土地柄や人々の気持ちをよく伝えているようで目頭が熱くなる。

サインまで貰ったこのCDなのだが、今となっては、これが私のバーボン・ストリートへの深い想いを揺さぶっている。デキシーランド・ジャズだけがニュ−オーリンズの魅力なのかというと、そうではない。ケージャン・フードと呼ばれるピリリと辛い料理をパティオ(屋外テラス)で味わう楽しみも外輪船という昔ながらの大型ボートでのミシシッピー河の川下りなど、どれもこれも忘れずにいられようか。

あのとき、出会った人たちは、今、どうしているだろう?ジャズを聴かせてくれたミュージシャンも、すらりとした身体のダンサーたちも、眼をクリクリさせた靴磨きの少年たちも、史上最悪の水害の中で、流されなかったか?ただただ、無事を祈るばかりです。
ニューオーリンズが往年の輝きを取り戻すまで、一体何年かかるのだろう。287年もの歴史を持ち、人口50万人の情緒溢れるあの街は、過去数世紀にわたって、多くの洪水やハリケーンと戦って来た。外国からの侵略や北軍の支配などにも乗り越えて来た。現在がどんな状態であるにしろ、きっと、乗り越えられるはずだ。何年かかってもいい。あのバーボン・ストリートの雰囲気を取り戻してほしい。

(原島一男)

初出:MJ「無線と実験」2005年12月号 「オーディオは悩ましい」(2)
    誠文堂新光社
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2005年12月11日

皇帝協奏曲の変わり種

 パリのホテル・ラファエル。この秋のこと、ダイニング・ルームでベートーベンの「皇帝協奏曲」が聞こえて来た。ほとんど、聞こえるか聞こえないかほどの小さな音だが、第一楽章の一部の旋律、それを何度も何度も繰り返す。今、流行りの‘いやし’の音楽なのか?気になっていたら、次の朝も同じ旋律が聞こえてくる。ところが、その旋律の後のピアノの部分はない。この作曲家は偶然これを造ったのか?そのままにしては、もったいないので、横にいたウェイターに聞いてみた。
「すみません。あの音楽ね。どこでかけているか分かる?」
ウェイターは、一瞬、戸惑い、何と返事していいか、と迷っている。それはそうだ、注文を聞いて料理を運んだり、ナイフやフォークセットするだけの仕事のはずなのに、見慣れない東洋人から、いきなり、天井のスピーカーを指して「あの音は?」と聞かれたって、答えようがない。
「つまりね。CDなのか、それともテープなのか、知りたいんだけど?」
 彼はますます困惑して、「ちょっと、お待ちください」と言って、その場を離れた。フランス人だから英語が分からないのかな、とも思ったが、こちらの言うことは理解したらしい。少し経つと、フロントの女性が一枚のCDを持って近づいてきた。
 「お待たせいたしました。あの音楽ですけど、調べてみましたら、このCDに入っています」
みると、So Parisian...So Raphael(とてもパリジャン、とてもラファエル)というCD。淡い赤とオレンジと茶色の台紙に、エッフェル塔と画家ラファエル、それに、このホテルのすべての食器についている美しいマドンナ肖像を組み合わせた紙のジャケット。22ユーロ(約3、000円)。私は部屋に届けるよう頼んだ。
 そのCDには、15曲収録されているが、その‘皇帝’の繰り返しは When You Sleep (Benjamin Beduneau)という作品、演奏はLancelot。改めて聴いてみると、フランスというよりカサブランカとかアラブを彷佛とさせる、やや退廃的ムードもあって、なかなか聴かせる。音の運びといい、テンポといい、リズム感といい、今の時代にピッタリ合っている。聞こえてくるだけで心が休まる。リラックスする。

(原島一男)

初出:MJ「無線と実験」2005年12月号 「オーディオは悩ましい」(2)
    誠文堂新光社
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2005年10月27日

ユ−ザ−・フレンドリーなリニア・トラッキング

リニア・トラッキング・プレーヤーは、その後、あまり見直されず、忘れられる運命にあった。ところが、今になって、じっくり観察してみると、この方式は単に振動に強いだけでなく、多くの利点を持っていることがわかる。そのひとつ:今の言葉でいえば、‘ユーザー・フレンドリー’な 操作性。CDしか扱ったことのない人は、音楽を聞くのに、LPをジャケットから出して、ターンテープルに乗せ、カートリッジの針先をレコードの外側の溝に乗せるという作業が大変だ、という。昔は、誰でもそれをやっていたし、針が溝に入ったのを確かめてから、アンプのボリュームを上げる、それがオーディオの楽しみの一つだと主張する人までいるのだが。リニア・トラッキング・プレーヤーの多くは、レコードをターンテーブルに乗せたら、あとはボタンを押すだけのフール・プルーフ設計になっている。もちろん、演奏が終れば、カートリッジはスタート位置に戻り、モーターの電源が切れる。また、製品によっては、CDのように好きなトラックの選曲をしてくれるものもある。

優れた製品は時代を選ばない。
今のようなビジネス利益追求の時代だからこそ、時間がテストした隠れたテクノロジーを探し出して、見直したい。それが、豊かなオーディオ・ライフなのではないだろうか。

(原島一男・はらしま かずお)

初出:MJ「無線と実験」2005年10月号 P196「オーディオは悩ましい」(1)
    誠文堂新光社

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2005年10月26日

リニア・トラッキングの構造は?

1970年代に開発されたリニア・トラッキング・プレーヤーは、カートリッジ自体がターンテーブルの中心に向かって動くリニア方式ということで、レコード原盤をカッティングするときと同じ経路をたどる。このため、無理のない自然なトラッキングができる、レコードの溝に向かう針の角度がカッティングのときと同じ状況を創り出せる、それで、左右の音の分離(チャンネル・セパレ−ション)がよくなり、歪みを最小限に抑えられ、音の振幅(ダイナミック・レンジ)に、より柔軟に対応できる。従来のカートリッジを支えるアームは、カートリッジがカーブを描いて移動するが、この方式は直線的に移動する。構造的には、かなり高度な技術が必要だったが、日米欧のオーディオ・メーカーは、それを克服して、製品化していた。少なくとも10種類が市場にあったと思う。LPジャケット・サイズがあるかと思えば、ターンテーブルにレコードを圧着する機能とリニア・トラッキングを組み合わせた画期的なプレーヤーまであった。
ところが、CDがこの世に出た1982年を境に、市場から消えてしまった。従来のプレーヤーの完成度が高かったこともあって、リニア・トラッキングの利点が充分に評価されなかったのかもしれない。

(続く)

初出:MJ「無線と実験」2005年10月号 P196「オーディオは悩ましい」(1)
    誠文堂新光社

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2005年10月25日

地震のとき、スタジオ用ターンテーブルは?

あの地震の最中にLPレコードを聞いていた人はいなかったろうか?もしかしたらと、懇意にしている横須賀の松下さんを訪ねた。
「7月の震度5の地震のとき、レコードをかけてましたか?」
「かけてましたよ。すごい揺れでしたね。針が跳んで、レコードに傷がつかなかったと心配しましたが、無事でした」
 松下さんには悪いが、私は嬉しくなってしまった。聞いてみると、プレーヤーは、アイドラードライブのターンテーブルにダイナミックバランスのアームと重針圧MCカートリッジ
「あの、ぼくのは Revox B-790、30年近くも前のスイス製品だけど、まったく跳ばなかったんですよ」
「そうですか?!やはり、リニア・トラッキングは振動に強いんですねえ」
松下さんは、かなり驚いたようだった。
「そのEMT だったら、どうだったかなあ?」
私は横にあるEMT927スタジオ用ターンテーブルを指さす。ターンテーブルでは世界最高峰のドイツ製定番。
「さあ、EMT でも跳んだでしょうね。ちょっとやそっとの揺れではありませんでしたから。でも、リニア・トラッキング・プレーヤーでも同じ条件だったら跳んだかもしれません。原島さんの場合は、たまたま恵まれた条件だったことも考えられます」
マグニチュード(M)6級の地震は10〜20年に一度しか起こらないということだが、そう、確かに幸運だったんだろう。

 (続く)

初出:MJ「無線と実験」2005年10月号 P196「オーディオは悩ましい」(1)
    誠文堂新光社
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2005年10月24日

地震に強い?リニア・トラッキング

2005年の夏、13年ぶりに震度5の地震東京を襲った。私は偶然、自宅の書斎でLPレコードを聞いていたのだが、驚いたことに針が跳ばなかった。部屋の棚から本が落ちるのではないかというほどの振動の中で、あの数ミルという微細なレコードの溝を忠実にトラックしていたそのプレーヤーはリニア・トラッキング式だった。聞いていたレコードは、MJQ at The Opera House。ジョン・ルイスのピアノソロが、地震が鎮まるまで、まったく途切れずに続いていた。
技術にそれほど強くない私は、それがリニア・トラッキングのせいかどうかが解らない。リニア・トラッキングでないほかの機械だったらどうだったろうと考え始めると、改めてオーディオの面白さと悩ましさを切実に感じてしまった。
技術に強い友人に、その話をすると、その人はこともなげに「それは当たり前、針とレコードの溝の角度を監視するサーボ制御がついているから」という。リニア・トラッキングは、そのように造られているそうだ。地震に強かったと感激したのは私だけで、技術的には、それほど驚くには当らないということなのかな?

(続く)

(原島 一男)

初出:MJ「無線と実験」2005年10月号 P196「オーディオは悩ましい」(1)
    誠文堂新光社
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